『安楽死特区』と父のこと
長尾和宏さんの『安楽死特区』を読み終えました。
若い人も還暦過ぎの人もそれぞれが不治の病を抱えて安楽死を望んでいる。
認知症、末期癌、多発性硬化症…
それを政府がかなえるという、東京のある一角で。
小説の形をとっているけれど、浮かびあがる問題はどれもリアル。
亡父を思い出した。
脳梗塞で倒れたと実家から連絡があり、駆けつけたときには命が助かるかどうかさえわからない状態。
しばらくして危機を脱したものの、意識ははっきりせず寝たきりで、
でも主治医はMRAを見せながら「少しずつ小さな血管がつながってよくなる可能性があります」と。
僅かでもよくなる可能性があるなら…と胃ろうの造設にも同意して。
足を引きずりながらでも再び歩く父の姿を想像していたように思う。
でもずっと寝たきりだった。その後何年も。
歩くことも食べることも話すこともできず、
胃ろうから栄養を入れ、おむつに排泄し、病院の天井ばかりを見ていた。
無理な延命治療をさせるつもりはなかったのに、結果的にさせてしまった。
もし父が自分の状態をわかっていたなら、こんな姿で生きながらえさせてくれるなと懇願しただろう。申し訳ない選択をしたと思う。
それでも面会に行くと、ニコッと笑ってくれる時期も少しはあった。あれは本当にうれしかったな。ワタシのことをムスメだと理解していたかどうかはわからないけれど、少なくともその時ワタシが来たことを喜んでくれていたのは事実だと信じたい。
今日の3食:
朝:白菜と豚バラ肉のうどん、紅玉
昼:ネギトロ丼、大根のぬか漬け、ゆで卵、紅玉
夕:ツナと玉ねぎと舞茸のパスタ、紅玉